我背子が 来べき宵なり 笹蟹の
蜘蛛の行い 今宵徴も
数年前、ある人に頼まれて創作した台本です。『土蜘蛛』をベースとして『土蜘蛛』では、口上で済まされる典薬頭とのやり取りを台本化し、土蜘蛛の精魂が典薬頭を取り殺し、胡蝶を待ち受けた上で、胡蝶を取り殺すという流れの演目です。
ここでは、たった一回きりの特別ヴァージョンのあらすじをば・・・・
平安中期都の守りの要たる摂津守『源頼光』は、原因不明の奇病に悩まされていた。
顔色悪く、頭痛ひどく、腹痛もひどく、如何なる療養養生を重ねるとも、その効験は、現れない。頼光は、自らの侍女『胡蝶』を典薬頭の御許へと良薬を授かるべく遣わせる。
典薬頭の許へと着いた胡蝶は、典薬頭へ頼光の病状を語る。頼光の病状が深刻さを知るにつれ、様子を怪しくする典薬頭。
「嬉しや、面白や」と小躍りする典薬頭に胡蝶が問いただせば、典薬頭は、蜘蛛の本性を現し、胡蝶を傀儡と為す。
典薬頭から胡蝶へと姿を変えた土蜘蛛は、魔薬を「良薬」と偽り頼光の許へ急ぐ。
頼光へ薬を勧める偽胡蝶であるが、急ぐ胡蝶の言動に不審な兆しを見た頼光は、胡蝶に次々と詰め寄り、膝丸がけたたましく鳴動し、瞬きの狭間に胡蝶の背中に怪しき炎が上がるのを見る。
胡蝶の瞳に欺瞞の光を見た頼光は、膝丸を抜き放ち、胡蝶を攻め立てる。
遂に胡蝶は、その本性を現し、頼光との格闘に及び、頼光の声に馳せ参じた四天王の一人「碓井太郎貞光」もし、これに参戦、土蜘蛛に一太刀入れるが、取り逃がしてしまう。
頼光は、膝丸を蜘蛛斬り丸と改名し、自ら化生退治に向かう為、貞光に随行するように命じ、土蜘蛛の残した血の痕を追いかけ、大和国葛城山の古塚の前で化生に追いつく。
格闘の末、遂に本命を現した土蜘蛛は、永代の恨みを今こそ晴らさんと、頼光主従に飛び掛る。
「眼にも見よ、古の世より伝わりたる我等が秘術、
地に潜みしは、国津神、
一言主のその力!」
摂津守 源 頼光
侍女 胡蝶
四天王 碓井太郎貞光
土蜘蛛の精魂