あら嬉 頼光の身内に加えられ
夜明けの道を 急ぎ降らん
平安中期、時の摂津守源頼光は、信州明野山に蔓延り、庶民に悩みを掛ける山賊を成敗せよとの勅命を奉じ、郎党の内武名高き卜部六郎季武を連れ、信州へと向かった。明野山に差し掛かるが、盗賊の姿を捜し求める内に、未知に踏み迷ってしまう。日も傾き、夜の帳に包まれようとした時、山頂と思しき所に一軒の明かりを求め、一夜の宿を求める。
現れた老婆は、快く宿を貸すことを了承し、2人を寝屋へと案内する。夜は、更に更けゆき、家の奥から、一人の影が現れる。
手には、長槍を手挟み、頼光達の寝所を伺う怪しき陰。陰の主こそ、家主の老婆の一子、怪力無双の「怪童丸」と言い、老婆こそ、頼光達が征伐に来た明野山の山賊であった。
寝こみを襲い、不意を付いたつもりになっていた2人だったが、怪童丸の穂先は、跳ね飛ばされ、白刃を片手に握った季武が飛び出してくる。そこに頼光も加わり、大乱戦になるが、不利と見た山姥は、わが子怪童丸を置き去りにその場を逃げ堕ちる。
更に頼光季武の剛の者二人を相手に奮戦する怪童丸であったが、その武勇の前に叶わず、危うくなった時、わが子の一命救わんと立ち戻った山姥が、飛び出してくる。頼光主従の武勇の前に尋常の人間でないと見た山姥は、頼光達に名前を問い、頼光は、ここで初めて名を明かす。
山姥は、己の行いを悔い、頼光に自らの一命を以って一子怪童丸の助命を請い、怪童丸を頼光の家臣団の末席に加えてくれるように頼む。頼光は、親子の情に感じ入り、怪童丸を”坂田金時”と改めて、自らの郎党とし、ここに世に言う「頼光四天王」が形成される。
頼光は、悪行を悔い、改心した上は、山姥の一命をとる必要も無いと、山姥を助命し、安住の地を見定めよ。と教え諭し、坂田金時となった怪童丸を伴い、季武と伴に夜明けの明野山を駆け下っていくのだった。